物撮りカメラマンという職業が消えた日

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 あらゆる商品を美しく撮影する「物撮り専属のカメラマン」という職業。なくなりつつあります。これは、すでに海外の家具メーカIKEAでは実際に起こったこと[出典:CG Society]です。2年前に。
 巨大メーカで一体何が起こったのでしょうか。


IKEAの事例

 IKEAは日本ではでっかい倉庫みたいな店舗!のイメージが強いかもしれませんが、カタログ販売が主力です。
 インテリアカタログの作成にはまず写真が必要です。今まではスタジオに行って、インテリアを担当していたデザイナーさんや、それを組み立てる大工さん、撮影していたカメラマンさんなどがいたわけですが、CGでもリアルな品質が確保できてしまう時代になったため、全部CGに取って代わりました。(2012年当時はカタログの25%がCG。2014年で75%なんて言われていた[引用::GIGAZINE]が今はほぼ100%。)
 IKEAは2012年当時で285人のカメラマン、大工さん、インテリアデザイナーを抱え、さらに約9,000㎡(幕張メッセの約半分らしい。)のスタジオを擁していた[引用:WSJ.com]というのですから、価格で勝負する企業としてはかなり大きなコスト削減が達成できたことでしょう。単純ですがコストを算出してみると、1人あたり月額30万円だとしても、1つのカタログに10か月かかるそうですから、30万円×285人×10か月=11.4億円が浮きます。でかい。売上4兆円・原価2兆円企業にとっては大したことないのかもしれないけど。
 どおりで家具メーカの中でもとりわけITに力を入れているわけです。今までもARでシミュレーションさせてみたりと、先端技術をいつもIKEAが一番に活用していましたね。


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Photo by CGSOCIETY


現場のフルCG化の後

 現場のフルCG化が完了すると何が起こるか。
 単純に言うと、彼らの仕事がなくなってしまうわけです。一切。設営は不要です-PCでマウスドラッグをすればいいですし、撮影は不要です-レンダリング開始ボタンをポチるだけですから。(そんな簡単なもんじゃないけど!!:( )
 となると…海外企業だし、彼らは皆 解雇になってしまうのか? と真っ先に思います。
 ところがそうでもないようで、この企業ではこういった対象の職種の方を再教育するとの方針を取りました。

 なぜか。撮影での構図の作り方のセンスやカメラ設備や設定の使い方、ノウハウはCGの世界でも十分通用するスキルであり、人材として価値があると判断されたからです。

 現に、素人がいきなり高品質CGが作れる環境を手に入れてもきれいな一枚を作れません。カメラ設定、構図、レイアウトが良くないからです。

 これらのスキルの有る/無しって、かなり大きい。というよりそのスキルで決まります。こう考えると結局は先に挙げた3職種の方々って必要ですよね。この判断は良いのではないでしょうか。



時代が変われば仕事内容も変わる

 インテリアデザイナーさんと大工さんは、スタジオ設営にかけていた時間を、バーチャルフォトスタジオの設営に時間をかけることになります。
 カメラマンさんは、スタジオで本物のカメラのシャッターを切る仕事から、バーチャルフォトスタジオでレンダリングパラメータの設定やカメラ構図を決定する仕事にシフトするのです。
 写真をPCで現像やレタッチできるスキルを持っている方であれば、CG空間でパラメータ設定などの作業はコツは差し置いてもそんなに難しくないでしょうから、教育時間もそれほどかからないでしょうし。

 ただし巨大企業だからできることかもしれませんし、将来的には契約がバンバン終了の憂き目を食らうカメラマンさんのほうが圧倒的に多いと思います。
 契約を切られないためには、先述の通り、例えばCGスキルを身につけておくべきです。MAYAとか3DS MAXとか。

 下の動画でIKEAの方がとあるフォーラムでプレゼンテーションしてくれています。どんなふうに設営やらマテリアル設定しているのかが分かります。

Making the 2016 IKEA catalogue. IKEA highlights

Video by chaos group

 設計士は、製図板でペンで線を引いていく仕事から、PCでマウスカチカチする仕事に変わり。
 スタジオで撮った写真の選別をする人は、ライトボックスにフィルムを置いてー! ルーペで覗いてー! 現像出してー! 次の日~! リバーサルフィルムを受け取ってー! 写真選別してー! 採用の写真を引き伸ばししてー! …なんてやっていたそうですが、PCでマウスホイールコロコロする仕事に変わり。(30年前、学生の頃とかにそういう仕事をしていた知人の話より。ちょっと違うところがあるかも。)
 仕事は時代とともに変わりますから、自らも時代に対応しなければなりませんね。

 私がやってる建築写真家もないかもしれませんね。んー、残ってはいるのでしょう。UE4とかMAXをやった後に撮影すると「何やってんだろう俺」って思うことがありますし。もう感覚的に変動に気づいているのか何なのか。写真を撮るのが好きだって気持ちが消えた瞬間が終わりの時かもしれません。

 
ライトボックス Photo by スノーさんのフォトスクランブル

 「PCスキルなんかより人との繋がりがすべて!(ちょい極端で大袈裟な書き方ですが。いつも先が見えているなあと思う友人です。)」みたいな実業家の友人がいるんですが、2年くらい前、いきなり「プログラミング教えてくんない!?」と切羽詰まった顔して相談してきたのを思い出したりします。プログラミングを学校教育の一環にしようと急いでいる理由にも納得です。10年もしたら自分が望んでいるアプリのひとつやふたつ作れるのが当たり前なのかな。


参考サイト

「VRが盛り上がるきっかけの一つになりたい」――桐島ローランド(アバッタCEO) – 経済界
バーチャル化進めるイケアの新カタログ – WSJ.com
商品写真はバーチャルの世界へ – GLOBAL INSIGHTS
IKEAのビジュアライゼーション事例 – HELIX blog
【こんな仕事があったのか】時代と共に世界から消えた「9つの職業」 – TABI LABO
CG Garage Podcast #84 | Martin Enthed – IKEA – Chaos Group Labs – Chaos Group
Why Ikea’s Mostly Computer Generated Catalog Will Soon Be the Norm – GIZMODO
Building 3D with Ikea – CGSOCIETY
フォトスクランブル SP005 暗室Live 前編 – スノーさんのフォトスクランブル
IKEAのカタログの家具は75%がCG – GIGAZINE
Yearly Summary – IKEA

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